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《ART LEAP 2018》展覧会プラン公開プレゼンテーション(作家最終選考会)

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  • 2018.5.23
  • Text: 美術担当O

神戸アートビレッジセンター(以下、KAVC)が今年度からスタートさせた30代〜40代の芸術家を対象とした公募プログラム「ART LEAP」。
今回は、去る5月19日(土)に開催した、最終審査を兼ねた展覧会プラン公開プレゼンテーションの様子をお届けします。

第1回目となる2018年度は審査員に美術評論家で詩人の建畠晢さんをお迎えし、選出された1名(組)は、来年2019年2月〜3月に当館で個展を開催します。
会場となるのは、1階のギャラリーと地下1階のシアター、スタジオ。
複合文化施設であるKAVCの特性を活かしたユニークな展覧会プランが数多く集まりました。
その中から書類による一次審査を経て最終審査へと駒を進めたのは、飯嶋桃代さん、ERIKA RELAXさんと池田精堂さんのグループ、黒宮菜菜さん、小出麻代さん、吉岡俊直さん、渡邉朋也さんの6組(50音順)。

発表順は当日の抽選によって決まりました。
審査員の建畠さんは、応募時に提出されたプラン書とポートフォリオをイベントが始まる直前まで熟読されていていました。
発表者は10分間のプレゼンテーションをした後、建畠さんとの質疑応答を行いました。
プレゼンテーション方法は発表者の自由ということで、中には参考作品を会場に展示する方もおられました。
途中の休憩時間には、観客のみなさんがその参考作品と共に、6組のポートフォリオを熱心にご覧になっていました。

最初の発表者は黒宮菜菜さん。
文学作品をイメージの起点として、KAVCの展示会場3室に合わせた異なるアプローチで作品展示を行うプランを発表されました。

2番目は小出麻代さん。
日常にある身近な風景や出来事をモチーフに、鑑賞者が展示空間を巡りながらその一つ一つの小さな動きや変化に耳を傾け、思考を働かせることのできる展示プランを発表されました。

3番目は渡邉朋也さん。
独自のドローイング生成方法によるインスタレーション作品を基軸に置き、各会場ではそのドローイング作品の鑑賞と、制作過程の追体験ができる展示プランを発表されました。

4番目は吉岡俊直さん。
シルクスクリーンによる版画作品の展示をメインにして、そのイメージを作り出す現場を提示することで、鑑賞者が作品のバックグラウンドを体感できるプランを発表されました。

5番目は飯嶋桃代さん。
神話を題材に、会場を巡ることで登場人物の変化の過程をまるでパフォーマンスを鑑賞しているかのように空間構成する展示プランを発表されました。

最後はERIKA RELAXさんと池田精堂さんのグループ。
お二人は道具の使い手として身体表現を行うポールダンサーとその道具を作る美術家のグループで、道具についての考察とその道具を使ったショー空間を見せるプランを発表されました。

6組のプレゼンテーションが終わったところでイベントは終了です。
質疑応答の時間には、内容に関してはもちろん、その展示プランの実現性まで、多方面からの建畠さんの質問は投げかけられ、ご来場のお客様もそのやり取りを食い入るように聞いていました。

プレゼンテーションが終わった直後に建畠さんがおっしゃった「皆とても良い。困ったぞ。」という一言が、1人の審査員が1組の作家を選ばなければいけない難しさを感じた瞬間でした。
最終審査の結果、「ART LEAP 2018」の出品作家はERIKA RELAXさんと池田精堂さんのグループに決定しました。
建畠晢さんによる選評は、下記にてご紹介しています。
https://s-ah.jp/archives/7470/

審査結果を作家のみなさんにお伝えした後には、1組ずつに建畠さんからの個別講評の時間を設けました。
一対一で発表内容や作品について対話することで、緊張されていた皆さんの表情も次第にほぐれていったように思います。
残念ながら選出は1組のみですが、選評にもあるように、どのプランもKAVCの展示空間をご自身の作品としてうまく消化されていて、作家の皆さんの力量の高さを深く感じ取ることのできる発表でした。

審査を兼ねたプレゼンテーションの場でしたが、美術関係者を含むたくさんの方々に「ART LEAP」の第一歩に立ち会っていただくことができました。ご来場いただいたみなさま、誠にありがとうございます。本企画が優れた作家の方々をご紹介する機会となれば幸いです。
そして何より、ご登壇いただきました6組のみなさまに深く感謝申し上げます。

さて、これから展覧会開催に向けて制作が始まります。
制作の様子はまたレポートしますのでお楽しみに!
「ART LEAP 2018」どうぞご期待下さい。
(美術担当O)