2019.01.27
神戸アートビレッジセンターでは、2018年度より、30〜40代の芸術家を対象とした公募プログラム「ART LEAP 2018」を開催します。
昨年5月の公開プレゼンテーションを経て第一回の出展作家がパフォーマンスユニットtuQmo(ERIKA RELAX、池田精堂)に決定し、いよいよ2月23日からは展覧会がスタートします。
それに先立ちプレイベントとして、株式会社Studio Sawnaの和田雅弘さん、ART LEAP 2018出展作家の池田精堂さんをゲストに迎え、関連トーク「展覧会をつくる仕事」を開催しました。今まで数多く展覧会会場の施工を手掛けてきたお二人に、設営と施工の視点から展覧会をつくる仕事について伺いました。
まずは和田さんからこれまでご担当された展覧会を紹介していただきながら、展覧会制作における設営・施工のお仕事とはどのようなことをするのか説明していただきました。
展覧会の設営・施工を専門とする会社の場合、基本的に2つの仕事のやり方があるそうです。
1つ目は、すでに展示構成や会場図面が完成している状態で見積合せの依頼を受け、いかに価格を抑えながら施工ができるかの価格コンペを行って獲得するもの。
2つ目は、展示作品リストをもとに和田さん自ら会場の構成図面を描き、作家や美術館学芸員と相談しながら作り上げていくもの。
和田さんは、大学卒業後に最初に入社した会社で、他会社の下請けとして展覧会の仕事を手伝った際に、美術館の空間や作家と作品について考えるやり取りがとても心地よく感じたことが展覧会設営を専門にお仕事をされるきっかけになったそうです。
「美術館の仕事がしたい」といっても、その頃和田さんの所属していた会社では展覧会を設営する部門は無かったため、実績がない業者に美術館から立ち入り許可は出ませんでした。諦めきれず粘りに粘った和田さんは美術館に半年ほど通いつめ、美術館側もその情熱に根負けして、やっと入札参加の許可が出してくれたそうです。
そこから30年和田さんの職人人生は続いています。
一方の池田さんは、大学院時代にたまたまギャラリー展示のアルバイトをする中で設営に関する様々な技術を学んだことをきっかけに、美術家として活動と並行しながら個人で展覧会設営の仕事をされています。
以前は作家活動と設営の仕事を切り離して考えていた池田さんですが、最近では仕事を通して得た経験がご自身の活動とクロスオーバーすることも増えてきたそうです。
印象に残った展覧会として挙げられたのは、京都市立芸術大学が持つニューギニアに関する資料展。
展示物の選別から関わり、事前のリサーチ活動や学者さんなどさまざまな人達と交流を経て、会場構成では見る人が作品に能動的に鑑賞する仕掛け作りをした池田さん。
引き出しを開けなければ資料が見られなかったり、子どもの目線でしか発見できない位置に展示物を置くなどの実験的な試みは、構造体を利用した空間づくりや身体と関わる物のあり方を思考しながら制作されているご自身の作家活動にも繋がる部分にも感じられました。
途中休憩を挟んだ後は、ご来場の皆さんからの質問にお答えいただきました。
この仕事をしていて一番心がけていることは?との質問には両者とも「細かいところまで美しく仕上げる」ということを挙げていました。
「細かい部分をきっちり仕上げることの蓄積で展覧会は大きく変わってくる」と池田さん。
作家とのコミュニケーションも大切にされており、印象的だったのが「作家のイマジネーションを実現することが私のすべて」という和田さんの言葉。
作家の考えていることは全て作品であり、基本的に「できません」は言わないという仕事に対する姿勢はまさに仕事人!
そしてお話を聞いていて何より驚いたのは設営期間の短さです。
展覧会にもよりますが、お二人は4日間くらいで施工を終えることが多いそうで、撤去にいたっては1日だけということもあるのだとか…。
和田さんは「展覧会ごとに一夜城をつくっているような感覚」と仰っていました。
私たちがいつもいろんな展覧会を楽しめるのも、展覧会を裏から支えるお仕事をされている方がいるからなのだと再確認しました。
ただ、内装や装飾を行う会社はあっても、美術館や博物館での展覧会会場の施工を専門にしている会社が関西にはまだまだ少なく、展示を支える人も少ないのが現状です。
なかなか表には見えない仕事なので魅力が伝わりにくいかもしれませんが、今回のトークをきっかけに、普段はあまり聞いたり見る機会のない《展覧会ができるまで》の裏側を知り、《展覧会をつくる仕事》について理解を深められたのではないかと思います。
ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
ゲストの池田さんが出展する展覧会、ART LEAP 2018「道具とサーカス」もお見逃しなく!
(美術アシスタントA)
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【展覧会概要】
ART LEAP 2018「道具とサーカス」
会期:2019年2月23日(土)〜3月17日(日)※火曜休館
会場:神戸アートビレッジセンター(1F・KAVCギャラリー、B1・KAVCシアター・スタジオ3)
出展作家:tuQmo( ERIKA RELAX × 池田精堂)
入場無料