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ART LEAP 2020「特別的にできない、ファンタジー」(出展作家:蓮沼昌宏)

2021年2月20日(土)3月14日(日)

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“もしかしたら、できるかどうかもわからない”
ー特別的にできない状況から生まれる「さみしさ」と緩やかに向き合う展覧会

神戸アートビレッジセンター(KAVC)では、2018年度より30代~40代の芸術家を対象とした公募プログラム「ART LEAP」を実施しています。今年度は、美術家/記録写真家の蓮沼昌宏を選出しました。
2020年、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、私たちの日常は大きく変化しました。人々の往来や触れ合いは制限され、予定されていた数多くの催しが中止となりました。

蓮沼もまた、自身の展覧会の中止を経験しました。こうした私たちの意思とは関係なく「特別的にできない」状況は、現在進行形で世界中に「さみしさ」を与えています。現在もなお、状況が好転することはなく、”もしかしたら開催ができるかどうかもわからない”という状況にある「ART LEAP 2020」の展覧会タイトルは「特別的にできない、ファンタジー」です。本展で蓮沼は、特別的にできない「さみしさ」をインスピレーションとし、神戸でのリサーチをもとに新作を発表します。

蓮沼は、主に絵画や手回し式のアニメーション装置「キノーラ」を用いて物語を紡ぎ出します。その物語は、さまざまな土地に滞在しながら得た、場所の歴史や現地の人々へのインタビューをベースとする一方で、場面背景や起承転結が明確に提示されない、いわば「非現実(ファンタジー)」なものとして展開されます。この非現実(ファンタジー)は、限りなく現実に基づくものであり、小さな体験を重ねることで次第に拡張されたものです。「ファンタジーは現実に到達する唯一の手段だ」_ドイツの作家ミヒャエル・エンデの言葉のように、蓮沼による物語は「現実についてあらためて考えるためにファンタジーは有効である」と鑑賞者に喚起させます。

「特別的にできない、ファンタジー」で展開される物語は、今、誰もが感じている特別的にできない「さみしさ」という現実を捉え直す存在となるでしょう。「さみしさ」を真っ向から捉えるのではなく、「さみしさ」をないがしろにするでもない、「さみしさ」との向き合い方を蓮沼は提示します。特別的にできない「さみしさ」に向き合って、蓮沼は今も準備を続けています。

「展覧会ができない。新しいウイルスの感染拡大にともなって」は2020年10月までの私にとって誇張ある言い方でした。2020年12月現在においては中止になってしまうかもしれないは現実的な話になりました。この展覧会の案内が届く2021年は「このテキストを書いた人はそれでも希望を持っていたんだね」と誰かに振り返られるかもしれません。

世の中に向き合うためファンタジーになるくらい道に迷ってから物事を進めたい私のアプローチすらできない「特別的にできない、ファンタジー」がこれから待っています。それでも展覧会に向けて作品をつくり、準備を進めます。もしできなかったら?きっとさみしいはず。神戸にはルミナリエの中止や母国に帰られないさみしさが存在します。さみしさに向き合うため特別的にできないファンタジーは希望を持ち続けます。

蓮沼昌宏

開催概要

ART LEAP 2020「特別的にできない、ファンタジー」

出展作家:蓮沼昌宏
会期:2021年2月20日(土)-3月14日(日)12:00-19:00
休館日:火曜日 ※2月23日(火・祝)は開館、翌24日(水)休館
会場:神戸アートビレッジセンター(1F・KAVCギャラリー、B1・KAVCシアター、スタジオ3)
料金:入場無料
主催:神戸アートビレッジセンター[指定管理者:公益財団法人 神戸市民文化振興財団]

【関連イベント】

◎ゲストトーク「アートについてチンパンジーとハトのアプローチから」
[YouTubeライブ配信(予約不要)/会場聴講席有(要予約)]
日時:2月20日(土)18:00-19:30
出演:齋藤亜矢(芸術認知科学/京都芸術大学准教授)、蓮沼昌宏
会場:1F・1room
料金:無料

◎ワークショップ「クルクルアニメーションをつくろう!」[要予約]
日時:3月7日(日)14:00-16:00
講師:蓮沼昌宏
会場:1F・1room
料金:無料
対象:小学生以上(低学年は保護者同伴)
定員:8名
持ち物:空の牛乳パック(1リットル)

◎クロージングトーク「特別的にできない、これから」
[YouTubeライブ配信(予約不要)/会場聴講席有(要予約)]
日時:3月14日(日)18:00-19:30
出演:蓮沼昌宏、服部浩之(キュレーター/秋田公立美術大学大学院准教授/ART LEAP 2020審査員)
会場:1F・1room
料金:無料

出展作家プロフィール

撮影:三浦知也
写真提供:Minatomachi Art Table, Nagoya [MAT, Nagoya]

蓮沼昌宏(はすぬままさひろ)
1981年東京都生まれ。2010年東京芸術大学大学院美術解剖学研究室にて自画像をテーマに博士号を取得。2016年文化庁海外派遣研修制度でドイツフィルムミュージアム。近年の展覧会に2015年「越後妻有アートトリエンナーレ」新潟。2019年個展「数えることによって獲得するもの」gallery N、愛知。2020年個展「物語の、準備に、備える。」富山県美術館がある。現在、愛知県を拠点に活動。
https://www.hasunuma-masahiro.com/

展覧会のためのドローイング(2020年)

神戸アートビレッジセンター(KAVC)では、作家と連携した展覧会づくりを重視し、枠に問わられない表現の可能性を追求する展覧会を企画しています。
2018年度からは30代〜40代の芸術家を対象に、自身の活動で経験を積んだ作家の新たな表現の創造と意欲的な挑戦の場となることを期待して公募プログラム「ART LEAP」を開催しています。
第3回となる2020年度は、審査員にキュレーターの服部浩之氏を迎えて選考を行い、出展作家に蓮沼昌宏を選出しました。

「展覧会プラン公開プレゼンテーション(出展作家最終選考会)」および全体講評についてはこちらから

展覧会の様子

撮影:表恒匡

《1F|KAVCギャラリー》

展示風景

《B1|チケットブース》

「みずべのいきもの」(2021)

《B1|KAVCシアター》

「あかりをつけてまわしてみる2」(2021)

《B1|スタジオ3》

「とくべつてきにできないファンタジーにあかりをつける」(2021)

《1F|窓ガラス》

「こうべこう」(2021)

展覧会記録集

ART LEAP 2020「特別的にできない、ファンタジー」展覧会記録集

出展作家:蓮沼昌宏
デザイン:小池アイ子
作品撮影:表恒匡
翻訳:菅梓
印刷・製本:[記録集]株式会社グラフィック、[別冊絵本]神戸アートビレッジセンター
判型:110×178mm
項数:[記録集]100p、[別冊絵本]18p
発行:神戸アートビレッジセンター[指定管理者:公益財団法人 神戸市民文化振興財団]
発行日:2021年10月31日
定価:1,300円+税

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