ART LEAP 2019
神戸アートビレッジセンター(以下、KAVC)では、2018年より30代から40代の芸術家を対象とした公募プログラム「ART LEAP」を実施しています。
「ART LEAP」は、新たな表現の創造と意欲的な挑戦の舞台とし、経験を積んだ作家にとってステップアップの機会とすることを目指しています。また「ART LEAP」は、作家とKAVCスタッフが密に連携しながら展覧会を創り上げていくことが特徴です。
ここでは、2020年2月の展覧会までの制作過程をレポートで記録していきます。
2019年9月11日(水)〜18日(水)の1週間、ART LEAP 2019 出展作家の潘 逸舟(はん いしゅ)さんが神戸に滞在し、作品制作に向けてのリサーチに取り組みました。
今回の展覧会では、神戸における外国人移住者や外国人労働者の現状に焦点を当てながら、潘さんが自身の作品テーマにしている身体の属性の問題について取り上げた新作を発表予定です。今回の滞在では、こうしたテーマについて詳しくリサーチを行うべく、神戸の様々な場所や人を訪ねました。この1週間が、作品を制作する中での指標となるような、重要な滞在になったと思います。ここでは、リサーチの様子を前後編に分けて写真と共に振り返ります。
滞在1日目
滞在1日目は、まず展示会場となるKAVCの施設内を見学。
実は、潘さんが展示会場を実際に見るのは今回が初めて。実際の展覧会でどのように展示空間を使えるのか、様々に想像を膨らませながら見学しました。
館内を巡った後は、KAVCを飛び出して街歩きをしました。新開地商店街、湊川公園、湊川市場を順に歩きながら、KAVC周辺の街の雰囲気を見て回りました。
滞在2日目
2日目は、長田方面にリサーチへ行きました。
長田は、神戸の中でも特に外国人にまつわる歴史やつながりが深い街です。
この日は神戸に住む外国人の方々への支援活動を行う神戸定住外国人支援センター(KFC)へ。理事長の金宣吉(キム ソンギル)さんにお話を伺いました。
神戸定住外国人支援センター(KFC)では、日本語の学習支援や、デイサービス・介護施設の運営、外国にルーツを持つ子どもたちへの支援など、住んでいる人々のニーズに応えながら様々な活動を行っています。
お話を伺った後は、金さんにご案内していただき実際に施設内を見学させていただきました。
デイサービスセンターハナの会です。この時は、ベトナム語でレクリエーションの最中でした。
続いて、神戸定住外国人支援センター(KFC)から少し歩いて、ふたば学舎へ向かいました。
ふたば学舎の中にあるふたば国際プラザでは、ちょうど日本語教室が開催されていました。
また、この日は潘さんが宿泊滞在した国際交流シェアハウスやどかりで、長期滞在している方々にお話を伺いました。国際交流シェアハウスやどかりに滞在する方々は、中国やベトナム、インドネシアなどから来日していて、留学やお仕事のためなど目的も様々。そして、ほとんどの方が日本語を勉強されている最中です。
潘さんは、日本語が全く話せない状態で9歳の時に上海から来日しました。潘さん自身の、まだ日本語を話せなかった頃の体験談も交えながら話が盛り上がりました。
日本に滞在、定住している外国人の方々が、日本で今どのように過ごされているのかお話を伺ったり、実際に働く現場を目の当たりにしたりと、よりリアルな現状を知ることができた日でした。
滞在3日目
3日目は神戸港周辺を散策しながら、現在開催中の「アート・プロジェクトKOBE 2019:TRANS-」の内覧会に参加しました。
神戸港周辺には様々な工場がありますが、今回は工場内で実際に話を聞くことはできませんでした。ですが工場の周辺に足を運ぶと、工場から大きな音が聞こえたり、実際に働いている人の動きをみることができました。
「アートプロジェクトKOBE2019:TRANS-」出展作家のグレゴール・シュナイダー氏の作品は、低所得の男性勤労者のための一時宿泊施設であった場所や、昨日訪れた長田方面を会場に展開されており、今回のリサーチ内容ともつながりを感じながら鑑賞することができました。
〈「アートプロジェクトKOBE2019:TRANS-」は11月10日(日)まで開催中です。みなさまも是非ご鑑賞ください!〉
この日は、昨日の様にお話を伺いながらの取材はありませんでしたが、声や身体が不在になることで話を聞くのとは違った視点から身体労働について考えた1日になりました。
リサーチ活動も折り返し、取材を通して神戸に住む外国人の方々の現状が少しずつ見えてきたように思います。
滞在4日目以降の様子は、後編に続きます!
(美術アシスタント N)