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ニューあそび場の創造 2024年2月「ライトシティー」

トーク企画「私道が会いたい神戸人」を開催しました!

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  • 2024.3.31
  • Text: ニューあそび場の創造「ライトシティー」担当スタッフ・平川

ニューあそび場の創造2024年2月「ライトシティー」関連企画の一つとして、神戸で働いていらっしゃる素敵なゲストをお迎えしてお話するトーク企画を開催。
今回は、神戸市広報官を経て、現在は神戸フィルムオフィスや、Airtist in Residence KOBE(AiRK)の管理人として多岐に渡る活動をしている松下麻理さんをゲストにお迎えし、作品における地域性や、神戸にまつわる様々なお話や、アーティストと神戸(地域)が共にクリエーションしていく過程で、大切にしていることをお聞きしました!

トーク企画「私道が会いたい神戸人」

日時:2024年2月18日(日)13:30~
司会:私道かぴ
ゲスト: 松下麻理
(神戸観光局(フィルムオフィス・広報 担当部長)/ Artist in Residence KOBE(AiRK)運営)

「BE KOBE」の生みの親

今回、松下さんをゲストにお迎えしてお話をお伺いしようと思った1番の理由は「BE KOBE」にありました。私道さんが学生時代に、街中にあふれるようになった「BE KOBE」。
「BE KOBE」とはなんなのか、どういう経緯で「BE KOBE」という言葉が生まれたのか、生みの親である松下さんから誕生の経緯をお伺いしました!

松下さんは、2010年~2015年まで神戸市役所の広報官として働いており、2015年は、震災20年の節目の年で、神戸市が20年の時に何を発信していくのかをずっと考えていたとのこと。
震災を知らない市民の方が増えていっている中、今ちゃんと伝えていかないと、いろんなことが消えていく。震災を経験している人も、経験していない人もスルッと心におちるものができないかと思ったのが始まりでした。

松下さんが、シンボルマークのようなものを作ろうと思った、心の中に残っている2つの事例を紹介。

① I Amsterdam(アイアムステルダム)

アムステルダムの市民であることを誇りに思えるようなプロジェクトにしようと立ち上げた。

② I ♡ NY MORE THAN EVER(アイラブニューヨークモアザンエバー)

ニューヨークは傷ついてしまったけど、そのニューヨークを前よりもっと愛していこう。
このロゴが、言葉が、沢山の人の心を救った。

松下さんも、震災から20年という節目の年にそういうもの作りたいと考え、震災をきっかけに何かを始めた人のインタビューしたり、アンケート取ったりしていろんな言葉があつめました。
そこからプロのコピーライターさんに考えてもらって、デザイナーさんにデザインしてもらった結果「BE KOBE」が生まれたそうです!

喋ってもいいかなって思えたきっかけってなんですか?

「BE KOBE」のお話から、阪神・淡路大震災のお話に。
私道さんは、子どもの頃に学校で「しあわせ運べるように」の練習をしたり、震災で家族が亡くなった方のお話し聞いたり、震災教育として震災の話は聞いていたけど、改めて、全然震災のことを知らない、知ろうとしていなかったと話しました。

松下さんは、当時、西区に住んでいたこともあり、私が震災を語るだなんて…と思っていたそう。でも、被爆三世の新聞記者さんの取材を受けた際、

「見たこと、聞いたこと、何でも喋らないとダメなんです。」

強く言われたことがきっかけで、話していこうと思えるようになったそうです。

「私が話せないと言ってしまうと、その時に生まれてなかった人や、その時に神戸に居なかった人が、全然話せなくなってしまうのはいやだった。自分が言えることは言っていかないと…。」

そう話してくれました。

私にとっての神戸

様々な地域で活動している私道さんが、神戸を題材にお話を書くことの難しさを話してくれました。

「距離が近すぎる」

小さいころから過ごしているからこそ、思春期の思い出したくない思い出、いじめ、貧富の差が激しかった記憶。そういうマイナスな面ばかり見えてしまう。
でも、今回改めて松下さんとのお話をしていく中で、他のレジデンス施設にいる時のように、正しい距離感に戻してもらえた気がすると話しました。

聞きたいことは1つだけ
「すごくつらいことがあったのに、なぜあなたは生きていけるの?」

次は、松下さんから私道さんへの「聞くこと」の難しさや大切さの質問へ。

私道さんが、最初に地方で活動しようと思ったきっかけは、コロナだった。
劇場以外を見て演劇をしていなかったことに気づき、思った以上に日本は偏っているんだと感じたとのこと。
聞くのがすごく大事だと思ったわけではないけれど、話きいて、記録することが大事だと思った。
それを作品にすることで、触れる機会が増えるのではないか?そう思ったと話しました。

私道さんの話を聞いて松下さん自身も、人と話すときはバリアを作らず飛び込んでいく。腹割ってはなさないと本音は聞けない。信じて飛び込む。そう話しました。

神戸の人に聞く、神戸の何が好きなの?

私道さんから松下さんへ、どうしてそんなに神戸を愛しているのかという質問へ。

「神戸の人が神戸を愛する気持ちは、恋に似ている。好きに理由なんている?」

だからこそ、いろんなことを言語化していきたい。多彩な街、文化も自然環境も。きちんと話せるようになりたい。そう話してくれました。

例えば…
クリスマスの時に食べる「シュトレン」というドイツ発祥のお菓子。
クリスマスを待つ4週間のアドヴェントの期間に少しずつスライスして食べ始めるお菓子で、だんだん日がたつと、洋酒がしみ込んできて味が変化する。浅い時には浅い時なりの、深い時には深い時なりのおいしさがあるお菓子。
「シュトレン」で有名な神戸にある「FREUNDLIEB(フロインドリーブ)」というお店では、11月最初の週頃に発売して、1週間で完売するそう。その数なんと4万5千本!
ということは、12月初旬からせっせと「シュトレン」を食べている人が、どんなに少なくても4万5千人いる…。
「シュトレン」を販売しているのは、「フロインドリーブ」だけではないから、もっとたくさんの人が、ドイツ発祥のお菓子「シュトレン」を食べている。
神戸では、そういうことをして生活を豊かにしている、海外からの文化を受け入れて、自分たちなりに楽しんでいる人がいる。そう神戸の魅力を話してくれました。

「自分の記憶や周辺の目でしかみてなかったけど、人の見え方や気持ちを聞くと、深みが増していく。そうやって、街をどんどん好きになっていくんですかね。」

私道さんは、そう話してくれました。

一問一答

最後は、参加者の皆さんから質問を募集してお話しました!
「死ぬ前に、ここには行っておきたい場所はどこですか?」
「こうべっ子って、どういう特性があると思いますか?」
「スーパービーバーのMVの神戸が使用されていると聞いたが、その誘致もされたのですか?」
「アーティストインレジデンスっていうのは、全国にあるんですか?」
などなど…

私自身、生まれも育ちも神戸だからこそ、私道さんのお話も松下さんのお話も共感しながら聞くことができました。松下さんのように神戸を愛しながら、頑張っていこうと思います。

ご参加・ご協力いただいた皆様、誠にありがとうございました。