第14回本公演
「救うか殺すかしてくれ」
一人の中年男性がいます。自分の人生を呪っている珍しくないタイプの中年男性です。彼は恋をして、恋をしているという状態に陥ります。また彼は恋をしてしまいました。なぜなら恋というものにまだ諦めがついていないからです。そして彼は間違いを繰り返します。そのうちきっと彼には報いが訪れることでしょう。
正しいオッサンになれる自信がない。今のところ、自分のオッサン性を上手に育めている気がしない。このままいけばよくないオッサンになってしまうだろう。嫌だ。ただ、正しいオッサンとはなにか、という疑問もある。オッサン像における正しさとは。自分の将来を考えたときに、華やかなものは想像できなかった。まったく輝かしくない。一切の光がない。無明。唾棄すべきような未来が僕には待ち受けている。でも、それはそれでいいんじゃないか。そんな人生でしか拾えない真に迫った愉悦さや気楽さがあるのではないか、と思って、願って、そういうのを芝居にしようと思いました。たぶん芝居はスルスル面白いものが作れるだろうけれどものすごく迷っています、人生に。
☆①終演後アフタートークゲスト:多田淳之介氏(東京デスロック主宰)
☆②終演後アフタートークゲスト:渋革まろん氏(劇評家)
☆③終演後アフタートークゲスト:依田那美紀氏(『生活の批評誌』編集長)
※開演時刻の45分前受付開始、30分前開場
※日時指定、全席自由。受付番号順にご入場ください。
※未就学児の入場はお断りしております。あらかじめご了承ください。
※会場のお客様用エレベーター工事中のため、車椅子など階段での移動が難しいお客様は事前にお知らせください。
さまざまな若気を「笑えないユーモア」の元で描く。
理由はないけど、何となく不満。理由はないけど、何となく死にたい。青春時代に一度は取り憑かれがちなマイナスの情念を描きつつも、印象として決して暗くなり過ぎないのは、その会話や演技のはしばしから、妙なおかしみがダダ漏れるせいだ。深刻なテーマを笑いでコーティングすることで、口当たりを柔らかくする芝居は多いが、ユーモア精神をダークな物語でおおい隠すという、こんなヒネた芝居を作るのは彼らぐらいだろう。「笑えないユーモア」と呼ぶべき舞台は、ひとクセあり過ぎるがゆえに、忘れられない観劇体験になるのは確実だ。
text by 吉永 美和子