2018.11.22
インド東北部・ナガランド州の農村で今も生きづく“農村歌”と人々を描いたドキュメンタリー「あまねき旋律(しらべ)」。11月18日(土)の上映終了後に、日本ではまだあまり知られていないナガランド州へ主に装飾品の調査で何度も訪れたことのある小磯学先生をお迎えし、トークイベントを開催しました。
専門分野である装飾品のリサーチのために、すでに10回もナガランドへ訪れたことのある小磯先生。
トークでは、ナガランドの歴史や食文化についてなどをお話し頂きました。
—外観や民族の地理的分布
インドの一番東の端にある州がナガランド。人口は200万人で、その85%がナガ族になります。
山勝ちで非常に険しい立地にあり、一番高いところで標高3000メートル。人々が住んでいるエリアでも標高1500メートル前後があるそうです。
日本と同じ照葉樹林帯であり、自然環境が似通っているとのこと。ナガ族の中でも、70もの集団があり、着ているものや首飾りの違いで、どこのナガ族か分かるようになっているそう。
ナガ族の歴史は正確には分かっておらず、19世紀にイギリスがナガランドを支配した際の資料が一番古い記録だそうで、大まかに200年から昔と変わらぬ生活が営まれているといいます。
ナガランドは、19世紀以降にインド帝国の支配下に置かれていくと同時に、イギリス、アメリカ、イタリアから宣教師がやってきて人々を改宗していき、今はナガランド州全てキリスト教が主な信仰なのだそう。それまでは、ありとあらゆるものに命が宿っているとする精霊崇拝(アミニズム信仰)が一般的で、その時代には、通過儀礼として、首刈りが行われていたという歴史があるそう。しかし、キリスト教の普及によりその考えは変わったものの、精霊崇拝の考えは今も一部に残っているのだそうです。
-食べ物や市場
インドといえど、地域によってその食文化は大きく異なっています。
ナガ族の食文化はとても豊かで、非常に野菜が豊富で、動物系の資源のほかにカエル、タニシ、蚕、蜂の子もナガランドでは重要なタンパク源になっています。また、市場には日本と同じように納豆もあるそうで、気候の近い日本との共通点が見られます。
料理の特徴は、唐辛子の中でもトップクラスの辛さを誇る、ブート・ジョロキアという唐辛子を使用すること。どの料理も美味しいが唐辛子が入っているのでどの料理もとても辛いそうです。もう一つ驚いたのは、豚や牛、チキンやポークの他に、犬も食べるそうで、犬は一番高価な肉ということです。食を通しても国の文化の違いが見えてきます。
そして、ナガランド州には独自の牛がおり、儀礼を行う際にはなくてはならないものだそう。
そのナガランドの牛の飼い方は独特で、普段は山の中で放し飼いにしており、牛たちは小屋に置いた塩を求めて時折山を降りてくるという、半分家畜化/半分は野生化しているという飼育状況なのだそうです。
また、人々が普段の食事に使用する食器は、昔から竹を器がわりに使用しているそうです。
しかし、今ではアルミやプラスチックが普及してきているそうで、食器だけを見ても時代の変化が垣間見えました。
この様に、今回のトークイベントでは、映画の中では紹介されていなかった知られざるナガランドの歴史や地理、そして食文化に触れることができました。
1時間あまりの小磯先生の講義はとても贅沢なものでした。
ご来場いただきました皆様、ありがとうございました。
(広報担当)
写真:1点目以外すべて(C)the u-ra-mi-li project