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特集上映「80’Sアイドル映画と新人監督が生まれた時代」

2018年8月11日(土)16日(木)

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上映期間 2018.8.11(土) – 2018.8.16(木)

上映スケジュール8.11(土・祝)
10:45「セーラー服と機関銃」
13:00「すかんぴんウォーク」
15:00 トークイベント「アイドル映画とスター映画」
15:50「野菊の墓」

8.12(日)
10:45「時をかける少女」
13:00「セーラー服と機関銃」
15:15「ファンシイダンス」

8.13(月)
10:45「ファンシイダンス」
13:00「野菊の墓」
14:55「すかんぴんウォーク」

8.15(水)
10:45「野菊の墓」
13:00「時をかける少女」
15:05「セーラー服と機関銃」

8.16(木)
10:45「時をかける少女」
13:00「ファンシイダンス」
15:05「すかんぴんウォーク」

料金一般1100円、かぶっクラブ900円、3回券3000円(期間中有効)、 トークイベント500円(映画の半券提示で入場料無料) ※当日券のみ販売 ※各回整理券発行・入替制監督相米慎二、澤井信一郎、大林宣彦、大森一樹、周防正行出演薬師丸ひろ子、松田聖子、吉川晃司、本木雅弘

80年代のアイドル映画と新人監督の密接な関係を探る

80年代がリバイバルされつつある中、80年代の邦画はどうであったでしょうか。
角川映画をはじめ、いわゆる「アイドル映画」が次々と製作され賑わいを見せる中、一方で大林宣彦、相米慎二、大森一樹など撮影所育ちでない新人監督が活躍を見せ始めるなど、未来を担う多くの監督が育成されてきた時代でもあり、日本の映画史上において看過できない重要な時代であったといえます。
時代を飾った「アイドル映画」が映画界にどのような影響を与えたのかを、今この時代に振り返ります。

上映作品:
「セーラー服と機関銃」(1981年/主演:薬師丸ひろ子/監督:相米慎二/112分/配給:KADOKAWA)
「野菊の墓」(1981年/主演:松田聖子/監督:澤井信一郎/91分/配給:東映)※フィルム上映
「時をかける少女」(1983年/主演:原田知世/監督:大林宣彦/104分/配給:KADOKAWA)
「すかんぴんウォーク」(1984年/主演:吉川晃司/監督:大森一樹/105分/配給:東宝)※フィルム上映
「ファンシイダンス」(1989年/主演:本木雅弘/監督:周防正行/101分/配給:KADOKAWA)※フィルム上映

関連トークイベント:
「アイドル映画とスター映画」
日時:8.11(土)15:00
会場:KAVCシアター
料金:500円(映画の半券提示で入場料無料)
ゲスト:大森一樹監督
1952年大阪市生、京都府立医大卒。高校時代から8ミリ映画を撮り始め、1977年、シナリオ「オレンジロード急行」で城戸賞受賞、翌年同映画化で劇場映画監督デビュー。以後、80年に自身の医学生時代を描いた「ヒポクラテスたち」(監督・脚本)、88年には「恋する女たち」「トットチャンネル」(監督・脚本)で文部省芸術選奨新人賞受賞。89年から平成ゴジラシリーズを手がける。2006年より大阪芸術大学映像学科で学科長を務め、若手映画人の育成に携る。日本映画監督協会理事。

作品解説:
「時をかける少女」
角川映画の生み落とした奇跡の一本。角川春樹と大林宣彦がオーディションで大いに押した15才の原田知世の映画初出演作。未来から来た少年と高校生の少女が時空を超えて淡い恋をする筒井康隆の原作。この映画が日本の現代映画史に残る監督の演出力と俳優の最も輝ける旬との出会いの理想的な姿になった。それは、80年代もはや映画にロマンチズムが求められなくなった時、大林は、尾道という地方に舞台をもっていけば、それが成立することを証明した。最初にタイトルバックの障子と静かな音楽とのオーソドックスなスタイルで魅せる。そして上原謙と入江たか子という戦前のアイドルを使うことの映画愛。今回見て、姉妹の関係とラストの未来での再会と、あの新海誠の『君の名は。』と設定がそっくりなことを発見した。ぜひ見比べてみてください。そして何よりラストのエンディングロールの終わった後の知世ちゃんカットまで席を立たないように。これぞアイドル映画だ。

「セーラー服と機関銃」
時代を乗り越えたアイドル映画の金字塔。薬師丸ひろ子をスターダムに押し上げた快作巨編。
田中陽造脚本の乗りに乗った冴えたセリフと相米監督と薬師丸とのサドマゾ・バトル。見事に全力疾走した薬師丸ひろ子の体当たり演技は、その後の「三丁目の夕日」に至る現在も一線を走りつづけている役者生命の糧になった。この時代小津と溝口映画の再発見があり、若手監督たちがみんなマネた。
相米監督も長回しをこの映画でも徹底した。よく見ると薬師丸は、緊張すると手足をバタつかせる。カットを割らないから全身で演技するしかない。このスタッフ・キャストのワンシーンに注がれる緊張感がこの荒唐無稽な話をリアルな少女成長譚に成就させた。アイドル映画にもかかわらず大人の情事を多分に描いているのもジャリ番だけどバカにするなと不敵に笑う脚本家と監督の顔が思い浮かぶ。

「ファンシイダンス」
ロックバンドを組んでいた大学4年生陽平が実家の寺の後を継ぐため禅寺で修行するハメになる岡野玲子の漫画原作をこれが商業映画初長編となる周防正行が脚本・監督したお坊さんコメディ。はじまりの托鉢修行の数カットで表現されるドキュメントタッチの長田カメラマンの撮影が全編に艶を出して、軽いコメディ映画をさわやかな青春映画に昇華している。この作品から『Shall we ダンス?』まで余り知られぬ題材を主人公たちが体験する周防スタイルがはじまる。そういう意味では原作はあるが周防監督のオリジナル作法を決定づけた一本といえる。見どころは、スマートな彦摩呂のモックンにぶつかる名演は、今や貴重。それからラストの陽平と寺との法戦式のモックンの迫力説法。そして忘れてならないのが住職の重鎮俳優・村上冬樹さんの軽妙な身のこなしと卓越した演技が、軽すぎる喜劇に良い重しになっていること。

「すかんぴんウォーク」
ナベプロが大型新人・吉川晃司を売り出す三部作の第一作。
大森一樹版『真夜中のカーボーイ』と言った趣のある、青春を刹那にもがく18才の民川裕司のサクセスストーリー。
脚本の丸山昇一のオリジナル。東京湾に吉川晃司が泳いでやってくる冒頭の奇天烈なシーンから始まり、都会で歌手を目指している山田辰夫と役者を夢見てやってきた吉川との下積み生活の交流を通して、苦難にめげず駆けあがってゆく若者の生をラストでのふたりのカットバックで見事に描き切るストーリー。話は、かつての大手映画会社がアテ書きでつくっていた正統派歌謡映画やアイドル映画の路線。それを撮影所育ちでない大森監督が真摯に吉川晃司という新人アイドルに向き合って映画というセスナを空高く飛行しピタリと着地してみせた。ATGで立て続けて作った脚本監督の自主映画から脱皮した商業映画監督としての実力をみせた初めての一本になった。

「野菊の墓」
何度も映画化された伊藤左千夫原作「野菊の墓」を映画初主演の松田聖子と初監督の澤井信一郎とのタッグによる文芸クラシックスの絶品作。
アイドル映画は、映画会社自ら製作するものと所属事務所と映画会社とで組んで行うものがあるが、松田聖子所属のサンミュージックが製作した第一作。70年代の山口百恵とホリプロの一連の作品群の後継。一重の目に華奢な身体の聖子の素の本人が物語が進むにつれて「民子」になっていく。その締め付けられる切なさが感動を呼ぶ。他の独立系の監督と違って、撮影所育ちの澤井が初監督した初々しさが聖子の初々しさと重なって艶やかな名品になった。森田富士郎の撮影がとても丁寧で、移動やガラス窓ナメのカットなどしっとりとして、川や山のロングショットが効果的である。そしてオーディションで選ばれた政夫役の桑原正の目が一途な民子への想いを表現するのに成功していた。この澤井監督の腕の良さがその後の角川映画や大作へ繋がる才能を示して、根岸吉太郎と共に撮影所育ちの最後の監督でもある。
全て解説:田中じゅうこう
『セーラー服と機関銃』©KADOKAWA 1981