あの頃、輝いてたんはシュープリームスやのうて、あたしらやん!
どこかの街の、どこかのアパートで夢を抱えて生きている女性三人組コーラスガールの物語。
『焼肉ドラゴン』『パーマ屋スミレ』など、数々の名作を世に送り出し続ける稀代の劇作家・脚本家 鄭義信氏の作品「リバウンド」を、今回は鄭義信氏の初演出で上演します。出演は、劇団ソラシードのはせなかりえ、Arawas Factoryの小安展子、劇団プロデュース・Fの小林みね子。
兵庫県出身の鄭義信氏が2010年に自転車キンクリートSTOREに書き下ろした物語を、出演者とともに新たに立ち上げます。どうぞご期待ください。
和田アキ子が歌う『コーラスガール』という曲がある。
鄭 義信
さほどヒットはしなかったけれど、なぜかメロディと歌詞の一部を鮮明に憶えている。
♪ 同じ仕事仲間のあんたが抜けると
さびしくなるってみんな思ってるわ
(途中不明)
コーラスガールの旅だもの
(途中不明)
旅先でいつか手紙を書くけど
幸せだったら返事はいらない
妙に切ないメロディと歌詞が耳につく。ただのコーラスガール仲間に向けての歌にしては、あまりに切なすぎるのはなぜなのか、ずっと胸に引っかかっていた。あれやこれや膨れあがる妄想を抱えながら、ある日、僕は恵比寿のルノワールで本物のコーラスガールたちに対面することとなった。伝手を頼って、とあるコーラスガールたちに取材をさせてもらうことになったのだ。
今か今かと、そわそわしながら待っていると、賑やかにコーラスガール三人組が店内に入ってきた。彼女たちに「コーラスガール」の湿った匂いはしなかった。
「『コーラスガール』って歌、知ってますか」「知らないです」「あたしたち、コーラスガールって言いません」「それじゃ、なんて?」「コーラスグループかな……」
僕の妄想の「コーラスガール」たちは、簡単に消え去った。
けれど、「富士見町アパート」のあの部屋には、僕にはやっぱり「コーラスグループ」ではなく、「コーラスガール」が、鼻歌を口ずさみながら、去っていった仲間を想いながら、下着を部屋干ししている気がしてならない。
開催概要
「リバウンド」
日時:2018年
5月18日(金)14:00/19:30
5月19日(土)17:00
5月20日(日)14:00
料金:前売 3500円、当日 4000円 (日時指定・全席自由)
作・演出:鄭義信
出演:小林みね子(劇団プロデュース・F)、小安展子(Arawas Factory )、はせなかりえ(劇団ソラシード) 妻鹿達也、山崎義史
【スタッフ】
舞台美術:柴田隆弘
照明:福本正人
音響:本林将彦
衣裳:木場絵理香
舞台監督:北村侑也
舞台監督助手:木谷典義
歌唱指導:中島恵美
制作:リバウンド実行委員会
絵・宣伝美術:タメ
主催:リバウンド実行委員会
共催:神戸アートビレッジセンター(指定管理者:公益財団法人 神戸市民文化振興財団)
協力:兵庫県立ピッコロ劇団、大阪すみよし少年少女合唱団、町劇Akashi bb、劇団プロデュース・F、Arawas Factory、劇団ソラシード、Y2P、山中民子、仲本敏郎
助成:公益財団法人 神戸文化支援基金
作・演出家プロフィール
鄭 義信 CHONG WISHING(ちょん うぃしん) 劇作家・脚本家
93年に『ザ・寺山』で第38回岸田國士戯曲賞を受賞。08年に上演された日韓共同制作の『焼肉ドラゴン』は読売演劇大賞、朝日舞台芸術賞、芸術選奨文部科学大臣賞、紀伊國屋演劇賞など数々の演劇賞を総なめにした。その一方、映画に進出して、同年、『月はどっちに出ている』の脚本で、毎日映画コンクール脚本賞、キネマ旬報脚本賞などを受賞。98年には、『愛を乞うひと』でキネマ旬報脚本賞、日本アカデミー賞最優秀脚本賞、第一回菊島隆三賞、アジア太平洋映画祭最優秀脚本賞など数々の賞を受賞した。2014年に紫綬褒章受賞。